血を吐いてもなお

 

台風13号が接近してるとか。

 

台風も夏の訪れを感じさせる要素の1つですよね。僕はおでこが広いので風雨が嫌いです。それに加えて汗かきなので暑いのも嫌いです。

夏が嫌いなんです。

 

ひと昔前は、夏期講習なんてものに通ったりもしてたりしなかったり。それも夏が嫌いな理由であったりなかったり。

 

 

中1の頃、母親のゴリ押しでとある学習塾の夏期講習の体験に行かされました。

やる気のない僕は終始ボケーとしながら授業を受けてたわけですが、不幸なことに講師とマンツーマン。これは地獄ですね。

 

 

サボりづらいわけですよ、マンツーマンともなると。早くどっか行かないかなーなんて。するとね、講師は僕に課題を与えて席を外したんです。思いが届いたのかしら。

 

僕は天才ですから、1,2秒でそれを終わらせてボーとしてたんですけど、そんなときに机にある赤ボールペンが目に入ったんです。

 

 

このインク、吸ってみようか。

 

 

あれは直感でしたね、暇だったし、他にやることなんてないですから、迷わず吸ったんですよ。ボールペンの赤インク。

 

 

あまりに暇なもんだから全部吸い込んでしまいまして、でも飲み込むわけにもいかない。ここで初めて焦り始めたわけですけどもう時すでに遅し。

 

講師が戻ってきまして。

僕は口に赤インクを含んだままなんですよ。

 

 

あちゃーどうしたもんか、さすがにまずい。

 

 

 

この状況で講師に話しかけられても、喋ることができない。完全に俺の負けだ。流石に逃げ場もない。吐血のフリをするという作戦も浮かんだが、代償がでかすぎる。こうなったらだんまりを決め込むしかない。覚悟はできていた。

 

しかし僕は天才ですから、突破口を見つけだした。

 

「はい」か「いいえ」で答えられる質問であれば喋らなくてもなんとかなる。頷くか首を振るかでいいわけだから。

 

 

これに全てをかけるしかない。

 

 

講師よ、「はい」か「いいえ」で答えられる質問をおくれやす!

 

強く念じた。

 

 

するとね、奇跡でしょうか。僕の思いは通じて、講師はこういったんです。

 

「キミ部活は?サッカー部?」

 

 

オーマイガー!「キミ部活は?」だけであれば俺の負けである。なぜなら「サッカー部です」と答えなければならないから。

 

しかし講師はそのあとに「サッカー部?」と付け足したわけです。奇跡ですよね。これによって僕は頷けばいいだけとなるわけです。

 

僕の勝ちですよね。

 

 

 

 

ですから僕は興奮気味にこう答えました。

 

 

「はい!」

 

 

 

開けた口から大量の赤インクが飛び出す。

 

 

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唖然とする講師。

 

 

 

大敗北。

 

 

「はい」か「いいえ」で答えられる質問が来たことによる興奮から、頷くだけでいいところを、大口開けて「はい!」と答えてしまったわけです。

 

 

 

最近よく吐血するんです。とかわけのわからないことを言ってすぐ帰りましてね、当然その塾には二度と顔を出してませんわ。

 

 

 

 

 

 

ま、全部嘘なんですけどね。

 

 

敬具。