休み時間の怪
小学校一年生の休み時間、親友のY君に誘われた。
「消しピンやろーぜ!」
消しピンとは、机の上を土俵として、ターン制で自分の消しゴムを指ではじき、敵の消しゴムに当てて土俵の上から落とすというゲームだ。一見単純なゲームであるが、筆箱や定規で障害物を作ったり、おのおの消しゴムの個性によってはじき方にも変化が生ずる。その拡張性や戦略性の高さに私たちは夢中になった。
消しピンは、学年中で大流行となり、男女問わず誰もがやるようになっていった。授業中にやる生徒も出始め、教師は授業中の消しピンを禁止した。
私も当然消しピンにハマった。私の消しゴムは奇妙な赤褐色をしており、使い古され形も小さく丸くなっていた。お世辞にも強い消しゴムとは言えなかった。
そんなある日、母親と買い物に出かけたときのこと。私は夢のような消しゴムを発見したのだ。
デカイ。ひたすらにデカかった。そのデカさ、屈強さにおいて負ける舞台などあるだろうか。況んや消しピンをや。
これを使えば消しピンで無双できる!私はその場で母親にねだった。「でかすぎない?」とたしなめられたが、「消しゴムすぐ減るから、これなら経済的だよね〜」と答え、なんとか買ってもらえた。次の学校の日が楽しみで眠れなかった。
翌日、休み時間に「消しピンやろーぜ!」といつもの掛け声がかかる。しめしめ・・・これで一躍私もヒーローだ。
私が筆箱から消しゴムを取り出すと、みんなが
でけー!すげー!などとまくし立てた。私はとても得意な気持ちになった。
「うおぉ!ゼッテー倒す!」
勇ましいY君が、勢いよく私の消しゴムを狙い撃つ。
ズボッ!!
ん??
他のザコ消しゴムトレーナー達も僕の消しゴムに向け一斉放火した。
ズボッ
ズボボッ
ん???
みんなの消しゴムが僕の消しゴムに埋まった。
恐る恐る消しゴムを手に取ると………
それ、豆腐だったんですよねえ〜。